| -1048- 論文の続き:その3 |
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この下の方 #1040で「続く」としたまま、尻切れ状態にしていたら、最初にトリガーになった STAP細胞の論文に画像などの不正があったと理研が結論したようだ。このニュースで意外に思ったのは、女性研究者の実験ノートが 2冊しかないと言うことだが、私としては 「えっ? 未だに実験の詳細を『ノート』に残しているの?」という驚き。こうした研究者は、もうとっくに記録すべき全ての条件や結果データ、ヒントや考察等は PC上にファイル保存しているものと思っていたが、どうも最近の研究者はこうした疑惑指摘に対して証拠とするためにページに印刷日付入りの改ざんしづらい実験ノートを使うらしいと分かった。もし、PCへの保存等無しで本当に 2冊のノートだけということなら、それはやはり少なすぎるか、逆に余程の記憶力の持ち主だろう。まぁ、結果的に瑕疵だらけの論文になったということが全てを語っているんだが。 さて、話を本題に戻して、「論文」とは言っても同音異義語のようなこじつけ話の続き。#1040の私自身の昇格論文の経験から、逆にその後何人かの若手の論文にアドバイスしたことがあるが、そのアドバイスは多分他の人のアドバイスの仕方とは全く異なっていたと思う。 私もそうだったが、余程問題意識やそれに対する自身の考え方がはっきりしている場合を除き、せっかくの機会であることだし、数時間にしろ悩んで仕上げるものだから、形式的に「合格枠」に納めるような方法は取らない方がいいというのが私の考えだった。だから私がアドバイスする場合はまず、小さくてもいいから普段感じている具体的な問題点や、その問題点をなぜ「問題点」と考えるのかを聞き出す。そして、その問題点に対して、彼自身の価値観をどう反映させたいのかを話し合う。多くの場合、問題点なんて考えてもいないか、考えていたとしてもその問題点も取り組み方も普段考えていることは極めて表面的なことでしかないので、自分が将来どんなポジションでどんな仕事をしたいのかなどの将来展望を聞き出し、それを実現するためにその問題解決がどう関連して生かせるのか・・・のような事を話し合う。もちろん現実論として、私から見た彼と周りの能力比較なども客観的に伝える。 多くの場合こうした話をすると、その人の価値観が露わになってきて、自分でも気付かなかった/深く考えなかった自分の将来像がはっきりしてきてしまう。大きな言い方をすれば深層の人生観や価値観に気付いて、仕事に対する考え方が変わってしまうことだってある。せいぜいが1回 2時間程度の話を 2度ほどするだけだが、そうした話の中から浮かび上がった彼にとっての真の問題点とそれへの取り組み姿勢をクリアーにして、それをストーリー化して論文に仕上げられる骨子を決めたら、後は本人に任せて論文形式の決意表明文を書いてもらう。 こうすることで、例文から入ってそれに何とか似せた中身のない論文を書こうとしていた姿勢から、自分の将来展望を見通すきっかけが生まれると思う。普段の面接などではなかなか触れる機会のない話になる。 そうしたアドバイスをした結果は、少なくとも論文評価では周りも驚くほどの仕上がりで、もちろん難なく「合格枠」には入る。但し、今まで深く考えなかった自分の将来や希望に気付くきっかけになるので、転職や職種変更などを伴う決断につながることもあり、私としてはそのアドバイスが本当に彼のためになったのか?と引っ掛かることが多いのも事実。 今でも忘れられない事例だが、私が工場勤務の時に製品立ち上げで出張中の若手技術者が丁度 2度目くらいのこの時期に差し掛かっており、今年は何とか合格させたいと言う彼の上司が、製品の瀬戸際にもかかわらず論文練習のために試験前日朝に元の職場に帰してほしいと言ってきた。その技術者の性格からして、多分彼はそんな指示は快く受け入れるとも思えないので、いっそ私がアドバイスしようかと提案して、了承してもらった。そして試験前日の金曜日、定時過ぎてから彼と机を挟んで上記のようなやり取りをし、途中彼一人で考える時間もとって、最終的には夜中の 10時過ぎに骨子をまとめ、後はそれを彼が自分の言葉で文章にしてから帰って寝て、朝試験会場に行くように言った。 12時には帰るように言っておいたが、後から聞くと彼は夜通しでその文章を仕上げて徹夜明けで試験会場に行ったらしい。 その結果は、彼の上司が私に「いったいどんな魔法を使ったんですか?」と驚くような成績だったらしい。 しかし、やはり彼もそのことがあって 2年ほどして、自分のやるべき仕事をすると言って開発から別の職場に移ってしまった。この時も私は、あれが本当に彼のためになったのか?と悩んだ記憶がある。 今日の写真は満開になった桜。この老木も今年末には伐採されてしまうらしい。どんなに人を楽しませた桜でも、倒れては危険なので 老兵は去るのみ・・・ということか? |
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2014/04/02 |