ドキュメント履歴: 2003-07-xx 初回アップ
5.実験計画法は万能か?
多くの要因がお互いに複雑な相互関連を持ちながら単一の結果を生じるような現象を解析し、各要因が結果に及ぼす影響度合いを求める為に実験計画法が使われる。
確かに要因の数が多く夫々の要因の関連が皆目見当が付かないときに、要因をある程度絞りこむには便利で効率のよい方法ではある。しかし一般的な技術検討において全ての要因の結果に対する関連が全く不明であることは希であろう。多くの場合、その結果に対して最も効きの激しい要因の候補は2~3に絞られるものである。例えその事前の考察が当たっていなかったとしても、いやむしろ当たらない方が事前の予測と実際の結果の違いは技術者にとって印象深く、頭を巡らせる良い経験となって残るだろう。
それに対し各要因に重みづけせずに、機械的にマトリクスに展開して実験した結果から要因を解析するのにアタマは不要である。とにかくマニュアルの通りに要因を組み合わせて実験し、結果をパソコンに放り込めば途中経過はブラックボックスで各要因の効き率が出てくる。データをとる間に頭を使っていろいろ考えても、当初熟慮した要因が多ければ多いほどマトリクスは複雑で勘が働きづらく、それよりも途中処理はコンピューターがブラックボックスの中でやってくれるのだから頭を使うことなんか無駄である。だから頭を使うことはないし、ましてなにも外れるかもしれない「カン」を働かせて見込みをつける必要もない。
正当な方法である実験計画法を使って出た結果が間違えるはずはないが、少しくらい早く結果が出るからといって、下手に自分で考えた結果が間違えていたら怒られる。あえてリスクを侵すのはバカである。考えるよりは、実験計画法を信じた方が賢い。なにより実験計画法はあなたとは比べ物にならないくらい頭の良い人が考えた理論に裏付けされているのだから。
こうしてみると、実験計画法というものは便利ではあるが、その使うべき範囲をまず考えさせ、仮に少しくらい遠回りだったとしても、途中途中で頭を使って因果関係を一つづつ追いかけて実験させるのも必要ではないかと思う。
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