ドキュメント履歴: 2003-07-xx 初回アップ
9.何も企業だけが若者の脳ミソの退化に手を貸しているわけではない。
一人の技術者にとって何がその能力の適否を左右するかと言えば、それは恐らく一に生まれ持ってのものに加えて10~15才位までの経験によっているのではないだろうか。この頃までの興味とそれに基づく経験の質がその後の技術者としての能力を大きく左右しているように思える(もし彼が技術者としての道を歩んだらの話しであるが)。
この世代の遊びを一昔前と現在と較べてみると、現代は子供自身の工夫する楽しみが奪われた遊びが多いことに気付く。殊に自分で工夫したモノ作りの経験に関しては皆無といって良いほどであろう。ファミコンに代表される大人の作ったストーリーに沿って子供の表面的な興味が誘導される遊びや、プラスティック製等の見た目に精巧で機能的にも面白いおもちゃの氾濫で、今やおもちゃを遊びの道具として捉えたら、自分の手でおもちゃを工夫して自作することなど思いにもよらない。
仮に遊びの途中でおもちゃが壊れてしまったとしてもそれは自分の手では直せる可能性も無くまた直す必要も無い。生産性を追及したおもちゃに子供の修理の手が入る可能性は無いし、そんなことはしなくとも半年もすればそのおもちゃの話題性は失われるし、もっともっと心踊る新しいおもちゃが登場しそれらを苦も無く買ってもらえるのだから。百歩譲ってたまに作ることに喜びを見いだしたとして、自作とは比べ物にならない出来映えの大量生産の部品が組み合わさったメーカー製のおもちゃを見てしまったら元の木阿弥で作る意欲は削がれてしまうだろう。
さらに自作のための小さな模型用部品も販売利益の面から一般のおもちゃ店には敬遠されていると見えて、お目にかかる機会がなくなった。正に子供をターゲットにした「作らんかな」・「売らんかな」・「もうけんかな」のメーカー論理と販売論理、そしてそれらの思惑に巧く乗せられた大人達が子供達から本当の遊びを奪ってしまったともいえる。
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