【Ⅲ】 番外編 その3


ドキュメント履歴: 2003-07-xx 初回アップ

Ⅲ-3.プロジェクトマネージャの資質

1.手前味噌な話だが
<番外編>その2で書いたように、今から二十年近く前に(大方の予想を裏切って)私たちのプロジェクトチームはデジカメ新規事業の立ち上げのスタートダッシュをこれ以上ないくらいにうまく切った。数年してその新事業が売上や市場シェアなど全てにおいて盤石なものとなり、瞬く間に売上でも社内のトップ事業として既存事業化されたが、既存事業化されたことで逆にまたしても私の中の悪い虫が蠢き始めた。
デジカメ市場は私達が仕掛けた「画素数競争」がツボに嵌り、画素数が倍々ゲームで増えただけでなく出荷台数や売上金額も絵に描いたような倍々ゲームの様相を呈したが、私はそのプロジェクトの成功が単なるマグレだったのか、それとも某かの普遍的な要素を含んでいたために成功したのかを確かめたくなった。そのため出来ることならもう一度何か大きなプロジェクトを企画したいと密かに機会を狙って、写真専用プリンタなども企画したがどれもイマイチな結果だった。そして、デジカメ1号機を手がけてから5年ほどしたときに、今度はその製品関連分野ではあったが、競合他社などともコラボレーションして独自の記録メディア規格(メモリカード)を策定するというテーマに巡り会い、最終的にはメモリカード単体売上げ ン百億円のビジネスとして成功させることが出来た。
この2回の経験と、その間に挟まれたそれほどは花開かなかったプロジェクトの経験から、製造業における、あるいはエンジニアリング要素を持った新しいビジネス立上げのようなプロジェクトに必要な成功要因の幾つかを掴めた気がする。
 そうしたプロジェクトの成功要素とは、多くの企業が渇望している新規事業の立ち上げに必須の要素と呼べるようなものであろう。そしてそれらのうちでも最大のキーは新規事業プロジェクトのリーダーの適性だろうと思うので、その幾つかをピックアップして説明していこうと思う。
2.プロジェクトマネージャの資質
<楽天家>
 如何なる仕事も人間が司る以上、そしてその人間の能力・特質が千差万別である以上、そのプロジェクトが成功するか否かの最大の要因はプロジェクトマネージャの資質だと断言できる。もちろん、誰もこのことは否定しないだろうし、殊にプロジェクトマネージャを選任する立場の人間はにとっては頭を悩ます問題であろう。現に、具体的に目の前に 二人の候補がいる場合、どちらを選ぶかと言われてそれを測れる天秤のようなものを示すことは簡単ではない。それまでの実績、判断力、熱意、プロジェクトメンバーとの相性、等など考え出せばきりがない。しかし、そのプロジェクトが過去のプロジェクトの延長線上にあるようなものでない限り、一番重要な資質は決まっている。もしその二人の一方が楽天家で、もう一方が慎重派だった場合、楽天家に任せる以外成功はない。
 これは使命感や慎重さも勿論必要だが、それらだけで長丁場の修羅場を駆け抜けることは出来ないということだ。多くの人は地上に置いた幅 30cmの板の上なら何の苦もなく歩けるが、その板が地上 10mの高さになった途端歩けなくなる。このことは、人が持っている能力をどんな条件下でも常にフルに使えるものではないということの好例である。プロジェクトマネージャには、物事の本質から目をそらさずに不要な恐怖を振り払って己や仲間の能力を信じて進む事が要求される。板幅 30cmを渡れると判断したなら、それが例え地上 10mであっても、せいぜいその板の片方に手摺りを張り渡すアイデアと、あとは落ちたときの事などくよくよと考えないで反対側目指して突き進めるような資質が必要である。競争社会に於いては、両側に頑丈な手摺りを設けて板の幅を 60cmに増やしてから・・・というような、屋上屋を重ねた計画ではスピードに於いても斬新さに於いても他社には勝てないだろう。
プロジェクトの過程で何度となくぶつかる大きな壁を乗り越えて突き進むためには、少なくとも失敗の恐怖に心を支配されないで、万事休したような状況でもむしろ開き直って普段以上の能力を発揮できる人が必要だ。

<白紙に絵が描ける>
 楽天家の他に、もう一つだけ資質を付け加えるなら「白紙に絵の書ける人」だろうか。企業での殆どの仕事は先人の作ったシステムやルーチンの上で進むように出来ている。確立されたルーチンには色々な失敗や成功に基づく経験が凝縮され、同じ過ちは繰り返さないように考えられている。しかし、全くの新規プロジェクトならそれらの既存のシステム・ルーチンはほとんどが役立たない。無理に過去のノウハウに倣おうとすれば、違った部分が足枷となって成果はおぼつかなくなる。そんな新規プロジェクトなら、全ての条件はゼロリセットして全くの白紙状態にまず大まかなマイルストーンを置き、あとは前進しつつ細部を詰めていくしかない。しかし現代の大企業の仕事ではこうした「白紙状態」に自分で好きなように絵を描く事は殆ど経験できないし許されない。ひたすら敷かれたレールの上を全速力で走ることだけを求めるのである。だから、既存事業で実績を上げてきた多くのプロジェクトマネージャーは、突然レールは勿論目印すらない平原のまっただ中に立たされた途端、どっちに進めばいいのかが分からなくなってしまう。
 私の場合、そんな時に役立ったのは自分でモノを作ってきた経験、しかも他人の設計のモノマネではなく、世の中にないモノがどうしたら作れるのかと四苦八苦した経験だ。今までにない自分だけのモノを作りたければ、自分で完成形をイメージしつつ部品の一つ一つから作って徐々に仕上げていくしかない。当然途中で躓くが、躓いたら慌てないでリカバリー策を考える。平原のまっただ中でも、ゴールの方向と凡その距離だけが分かっていれば、その方向に見える起伏や樹木の種類などを頼りに道を決めて歩き始める。途中に大きな窪地や起伏があることが分かっていたら、正面突破するのか左右どちらに迂回するのか、その都度自分の体力や残り時間など臨機応変な状況判断をしつつ進む。こんなことはとてもマニュアルやルーチンワークに従っていたら務まらない。こうした言わば「出たとこ勝負」は ともすると周りの人間からは「いい加減」とも見える仕事の仕方で、細部まできちんと詰めてからでないと気の済まない能吏タイプの人間には無理な仕事の仕方とも言える。

<交渉力>
 別に新規ビジネスのプロジェクトマネージャーに限らず、営業だろうと工場の管理だろうとビジネスの上で交渉力は絶対必要なスキルだ。しかし、プロジェクトマネージャーの場合、他の仕事の交渉力とはかなり違った交渉力が必要になる。
 それは、他のビジネスのように日々の仕事の中の一つを獲得できるか失うかとか、あるいは自分の仕事を進めやすくするための交渉という類の交渉ではなく、その交渉結果によってはプロジェクト自体がポシャるかも知れないというような局面での交渉になる場合がほとんどで、いわゆる「伸るか反るか」という交渉をすることになる。また自分にとっては絶大な利益を伴う交渉であっても、相手にとってはそれほど利にならない結果となる場合だってある。そんな交渉において、相手を読み何が相手にとっての殺し文句になるのか、そこを突いて交渉するような、いわゆる「腹芸」ができなくてはならない。但し、相手を欺いたり一方的に自分の利を説くのではない。相手の利も考慮しつつ、話を進めることを最優先に考えて交渉する。
 そうした交渉姿勢は必ず相手に伝わり、結果的に「この人の言うことなら話に乗ってもいい」と思わせる本気さと信頼感を伝えることができる。

著作権は Y.Nakajima に属します。 無断転載は禁じます。


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