e日記風 独り言

気まぐれ & 気まま & 天邪鬼な老いぼれ技術屋の日々の記録のうち、電気製品やスマホ、あるいは世の中のサービスに関する記事です。
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-751- 殺菌家電
S社やP社が「プラズマクラスター」「ナノイー」などと呼ぶ殺菌機能付きの空調機などの家電製品がよく売れているらしい。
2年ほど前まで、殺菌フィルターの仕事をしていたので殺菌に関しては結構勉強した。その時の知識では、細菌などの微生物は細胞膜に覆われた単細胞生物だが、ほとんどの殺菌機序は微生物の生存に必要なタンパク質や構成物質の本来の機能を失わせることによる細胞破壊だということだった。加熱殺菌は熱に弱いタンパク質を変質させて殺菌するし、殺菌剤による殺菌は細菌の構成タンパクのどれかと化学的に結合などして細菌の分裂や生存を阻害する。オゾンなどのイオン化した気体の場合も同じく、イオンが細菌細胞中の荷電分子と結合することでその本来の働きを阻害して殺菌する。石鹸などは、親水性を表面に親油性を膜の内側に持って細胞を取り囲んでいる細胞膜の親水基に取り付いて膜機能を破壊するという具合に。
ちょうどその頃から、上記殺菌家電が発売され鳥インフルエンザなどのニュースも追い風となって売れ行きが好調になったようだ。
しかし、それらのパンフレットを読んでも殺菌原理はどうも納得行かなかった。通常はこうした新しい殺菌方法が考案されると、その殺菌機序に関する論文が発表されたり、第3者の追試結果が公表されたりするんだろうけれど、それもほとんど目につかない。唯一、当事者が北里などに依頼して行った実験結果のデータが公開されているだけだった。しかもそのデータは寒天培地上の菌の増殖実験だったと思う。空気中に微粒子を発散させて殺菌する殺菌方式の場合、空気の流れや空気中の水分子の存在(湿度)などが殺菌効果に影響することが考えられるので、厳密には空気中での殺菌効果実験が望ましいが、空気中に細菌を分散させて行う実験は寒天培地実験などと比べ精度の確保が難しく安全性も確保しづらいのだが、あれだけ大々的な宣伝をするんだからそのあたりのデータが無いと何時か突かれるのではないかと思っていた。
その内に私も仕事を離れ、興味が一気に失われたので気にならなくなったが、先日ネットでそれらの殺菌効果に対する疑問があることが話題になっているらしいことを知った。
<やはり>と思った。
大体、殺菌剤を考えればわかるが、人体に無害で細菌にだけ効果がある殺菌方法などはない。ある細菌の特定の構成物質だけを狙って機能阻害するようなピンポイントの殺菌剤が無いわけではないが、そうした殺菌スペクトルの狭い方法では、逆に多くの細菌に効かないから、殺菌家電には向かない。
細菌を構成するタンパク質も人体のタンパク質も性質はそれほど変わらないから、細菌の生存を脅かす殺菌方法は、人体粘膜などにも悪影響する。たとえそれがオゾンや仮に「プラズマクラスター」「ナノイー」などと呼ぶ微粒子だったとしても、有効に殺菌できるほど大量に撒かれた気体中に人間が生活したら、肌や目などの粘膜はボロボロになるか良くてアレルギーになるだろう。オゾン殺菌が一定の効果があるのに一般に普及しないのはそのあたりに理由がある。私が探したときには、オゾンが人体に害があって、なぜこうしたイオン粒子は安全なのかの説明もなかったような気がする。
だからそんな空気中に粒子を散布しても人畜無害で殺菌だけする「夢の様な」家電製品はあり得ない。実は殺菌市場というのはかなりいい加減な市場で、その製品を使ったから感染をしなかったとか、製品を使っていたにもかかわらず感染したということがほとんど実証できないという事情がある。マスクをしていても風邪を引いたからマスクメーカーを訴えたという話は聞かないことからも分かる通り、部屋に除菌エアコンを設置したのにインフルエンザにかかったとしても、その部屋だけで生活するわけではないから部屋の外で感染した可能性がある限りクレームにはしづらい。所詮こうした殺菌グッズは9割以上気持ちの問題で効果はどれも眉唾というのが相場で、踊らされる消費者が賢くなるしかない。まぁどうせ数年で市場の興味は失われて、過去の無用な技術になっていくんだろうけど。
私が心配しているのは、その前に小林製薬の銀イオン除菌剤などが受けたような過大広告の排除命令を公取委から受けなければいいが、ということ。小林製薬は排除命令を受けて該当商品の返品・返金を行ったらしいが、モノがモノだけにエアコンや空気清浄機、冷蔵庫などで返品・返金したら傾きかけた本体が倒れかねない。CMは「プラズマクラスターはシャー○だけ」などとやっているので、別に明確に「除菌します」「風邪を引きません」と言っているわけではありません・・・・などという言い訳が通用するとは思えないし。と考えると、このニュースはかなり大きな経営リスクだと思うんだが。
今日の写真は、下の赤いセンリョウと対になるような白いセンリョウ(千両)の実。いや葉の下に実がついているからマンリョウ(万両)かな? どっちにしろ、赤い実がきれいで目出度い名前が付いたんだろうけど、白い実だけではあまり目出度い感じはしない。実には罪がないが。
2012/12/27