e日記風 独り言

気まぐれ & 気まま & 天邪鬼な老いぼれ技術屋の日々の記録です。
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楽 天 の 商 品

-771- ボーイング787:しつこく続く
今日もボーイングの話。但しまたリチウムイオン電池の話に戻して。
どうやら JAL機の発火電池を解析した FAAも、ANA機の電池を解析した運輸安全委員会もどちらも独自では原因究明はデキなかったようだ。フライトレコーダの充電時の電圧にもX線CTの透視画像にも特別な異常値は見つからなかった、という話が漏れてくる。・・・・当然といえば当然。なぜなら原発事故の調査を火力発電所の検査官がやっているようなもんだから。今までの「一品作り」主体のメカを中心とした航空機の技術分野と化学反応を主として工場でプロセス管理されながら量産される電池では全く不具合のメカニズムが異なってくる。ボルトが緩んでいたとか金属疲労していたなどという不具合と、電池の電解液に若干の不純物が混じっていたなどという問題は解析の手法が全く異なるはずだ。
通常のメカニカルなデバイスや電子デバイスなら、彼らがまずやったように X線CTなどで問題パーツの内部構造をチェックすれば問題箇所がある程度特定できる可能性もあるだろうが、電池のような化学デバイスですでに燃えてしまったものを解析した所で、例えば 数十μの異物を見つけられるとは思えない。更に、飛行中はかなりな低気圧と低音中での作動になるんだろうから(加圧された室内に設置されていたなら別だが)、パッケージにはかなりな圧力差が繰り返し加わっているとおもわれ、そうした力が電極やセパレータに与える問題も無視できなさそうだが、燃えた電池では解析は不可能だ。例えば飛行の度にパッケージに常圧~低気圧が繰り返し加わった場合電極などの構成パーツのわずかの間隙の変化でも不具合が生じる可能性はあるが、燃えてしまった後では解析不可能だ。
だから電池の専門家なら燃えた電池のCTなんてそんな検討には期待しないだろう。まずやるべきことは、全ての正常品(かどうかは分からないが少なくとも未燃焼の)電池を運行停止中の787から全部取り出して、それらの検討をすることだろう。とくに同一ロットの電池の分解検討と過負荷試験は絶対に必要だ。1台だけの事故なら「偶然」があり得るから別の電池を調べても何も出てこない可能性もあるが、現役50台のうちほぼ同時に2台発生したということは偶然ではあり得ない。必ずほとんどの電池或いはシステムに同じ要因が存在し顕在化は時間の問題ということになる。だからそれを、別のリチウムイオン電池メーカーの技術者にやってもらうことが大事だ。出来れば最初に商品化したソニーなどの技術者が加わるべき(理由はここ)。
それと、もう一つ懸念されることがある。それは 電池セルを 8個も直列接続しているのに、フライトレコーダーの記録は両端の 32Vの電圧しか記録していないらしいこと。電池の直列接続による使用は「全く同じ」特性の電池なら問題ないが、ほんの僅かでも特性にバラつきが出た場合、その不均一が他の電池へのダメージになって問題を大きくすることはよく知られている。例えば 8個のうち1個の電池が早く放電してしまった場合、他の電池の放電でその1個は過放電される可能性が高い。そうなったら電池は必ず発熱する。充電する場合だって同じ。8個直列にしたために 1個の特性の不揃いが不具合に発展する可能性は非常に高い。1個のセルの電極が故障して容量が低下して結果的にその1個だけが過充電状態になっても、電圧としては 1/8しか現れない。リチウムイオンは内部インピーダンスの関係で比較的直列・並列接続がしやすいとは言われていても、PC用などならともかく、もし 8個もの直列電池を「航空機」に搭載するなら個々のセルを完全にモニターして、1個でも異常を示したら即回路を開放するようなシステムにしないとならないはずだ。それと、航空機で初めて使うというリスクを避けるためなら個々のセルの温度もモニターするなどの安全策は必要だったのではないか。何しろ何百人の命を左右するシステムなんだから。
・・・・と、ちょっと噛じっただけの門外漢の私でも 想像つくようなミスはまさかやっていないと思うが。どうもリスクの高い技術を「勇敢」にも航空機に適用したにしては、伝えられる情報は非常にプアーな気がする。
今日の写真は枇杷の花。いつも羽田から関西方面に向かう旅客機が通る航路を見上げた状態で撮影。
Li電池
2013/01/24