【U】 頭脳労働へのヒント



ドキュメント履歴: 2003-08-xx 初回アップ

U−5.見る/見せる ための工夫

 厄介な不具合などの問題を解決しようとして壁にぶつかって、やっと解決をしたとほっとして問題解決の過程を振り返ってみて気付くことは、いつもきちんと現象が見えた時がターニングポイントだったということである。
 それまで要因を推測しては幾度となくトライアンドエラーを失敗して、もう全ての原因は洗い尽くしたのに、と途方に暮れてしまって、それではということで何度目かのスタート点に戻ってもう一度今度は現象をよく見る工夫をしてみる。すると今までの推測とは全く違う新しい現象に気付くことがある。誰でも現象の細部まで見えて、問題点に気付けば後はもう解決したも同然で、理論が若干幼稚なカットアンドトライだったとしても、対策案に何とか辿り着ける。逆に現象がきちんと見えないままでは、高度な理論を使おうにも使いようがなく真の問題解決をしていないことが多い。何とか解決策を見つけたと思っていてもすぐに不具合再発でがっくり来ることになる。こうしてゴールに辿り着くのには幾度となく紆余曲折することになる。
 従って、技術の問題解決能力とはある部分で、見えない現象を目にみえるようにする工夫の能力であるといってもいいだろう。私は電気系技術者として育ってきたので、最初から目には見えない「電気」を相手にして仕事をしてきた。電流計であろうと電圧計であろうと、とにかく現象の挙動を掴むためには測定器という道具がなければ始まらない。従って自然と、問題にぶつかったときにはどうやって現象を見えるようにしようかと考える習慣が身についている。問題にぶつかっていきなり解決しようと切り込むのではなく、まず現象の細部を掴むための方法・道具を考える事から始めて、簡単には出来そうに無いと分かれば、次善の策としてカットアンドトライを試みるが、それでもいきなり問題解決を目指すのではなく、現象確認に重点を置くようにしている。カットアンドトライも上辺だけの場合と、本質を明らかにしようとするのでは、自ずと全く違うアプローチとなる。周りから見れば、何と回りくどいことをと思うであろうが、長年の経験では「急がば回れ」は最も有効な格言である。そして、こうした工夫の積重ねが出来る経験こそが、新しい難問にぶつかったときに最も頼りになる味方になる。
 以上不具合の対策について述べてきたが、これは技術的な話に止まらない。誰であろうと断片的な数字・現象から全体を掴む事は困難だが、適切な図表化された現象を見て問題点に気付かない人はいない。自分でも常に現象を目で見えるようにする努力をしていれば、他人に問題を分かってもらおうとした場合も簡単に見せる事が出来、説得が出来るようになる。

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