2016/08/15 初回アップ
メーカーパソコンなら TV視聴・録画もさほど難しくはないが、自作パソコンで TVを視聴・録画しようと思うと方法はかなり限られてしまう。その一番の理由は 日本独自の TV放送番組著作権管理システムである BCASだと思う。 DVDレコーダーのようなハード・ソフトが一体化した製品なら途中から信号を抜き出して別メディアに記録するなどの著作権逃れの対策もやり易いが、ユーザが組み立てるPCでコストを考えると本体側に搭載している高性能な CPUや GPUの処理を使わず全てオンボードのハードウェアで実装することは非現実的だ。 となるとどうしてもソフトウェアが介在することになり、システムを完全にブラックボックス化するのは難しい。 だから、あまり大っぴらに出回ってはいないが、おそらくはメーカーパソコン向けかサードパーティ向けに設計された TVチューナーボードのプライベートブランド的なボードを入手し、ソフトは出処がアヤしい自前調達的なソフトを組み合わせて視聴・録画するという方法になる。
しかも、PCフリークという人種はありきたりのツールや方法では満足せず、自分の好きなツールやオリジナルな手順にこだわるという偏屈な傾向を持っており、そのため普通なら出くわすことはない問題にも見舞われる。 しかしその問題解決も楽しんでしまうのが またフリークたる所以。
前置きが長くなったが、今回は 自作PCで TV視聴をする上で、一応準備されているシステムの再生プレーヤではなく、使い慣れた 動画再生プレーヤで録画ファイルを再生しようとしたが、一部番組で音飛びが発生し実用にならなかったのでいつものように しつこく追求してみた。
いつものお約束で、ここで書いたことは単に私が実験的に試した数回の結果であって、結果の保証はもちろん既存システムへの思わぬ弊害やとりわけ著作権絡みの問題がないことを保証するものではありません。情報を利用する場合は、利用者自身の適切な判断と責任で行って下さい。
1.TSファイルを VLCプレーヤーで再生すると音飛びが発生する
PT-3などの TVチューナーボードで受信した番組を録画した [ *.ts]ファイルを、VLC Player で再生するときの問題点なんだが、音飛びや画飛びするということが結構 Web検索で引っかかる。 私の場合も、特に NHKの録画を中心に音飛びやいきなり1セグ再生から始まるという問題が発生して気になっていた。 TVボード付属の再生プレーヤ(TVTest.exe)なら問題ないし X Media Record などのツールで MPEG-2 > h.264 変換すると VLCプレーヤで再生してもそうした問題はないが、録画ファイルのままだと、とりわけ NHKの番組は ほぼ確実にこうした問題が発生しているようだ。
何とか VLCプレーヤの設定で直せるのではないかと VLCの設定をつついてみたが、どうも芳しくなかった。 唯一、Web情報では途中でオーディオトラックを一旦「無効」にしてから再度元のトラックを指定すると治ると書いてあったが、試すとその通り再生中に一旦「無効」にして再指定すれば音飛びはしなくなることが分かった。(VLCメディアプレーヤは Ver.2.2.4)
画飛びや1セグ再生の場合には、オーディオトラックと同様にビデオトラックを一旦「無効」にしてから、再度元のトラックを指定すると正常になる。
右の図の左側がオーディオトラックを「無効」にする前の VLCメディアプレーヤのコーデック情報、右が「無効」にした後のコーデック情報。ここから、「無効」にする前は VLCメディアプレーヤは音声のサンプリングレートを 「44.1KHz」と認識しており、一旦無効にした後で再指定した後は「48KHz」と認識していることが分かる。
また、こうした音飛びが発生する録画ファイルは番組開始前に数秒のマージンを取ってあるため前の番組の「お尻」部分が数秒間録画されているファイルだが、そのマージン部分をカットしたファイルを再生すると音飛びは発生せず、コーデック情報でも最初から「48KHz」と表示される。従ってこうした音飛びが発生する録画ファイルは複数の番組が一つのファイルに録画されている場合で、VLCの再生処理で前の番組の音声トラック情報から次の番組の音声トラックに移るときに、正確なトラック情報を参照出来ていないためではないかと思われる。
もう一つ、TsSplitter という動画ファイルのビデオ/音声トラック情報などが切り替わった箇所で自動でファイルを切り分けるツールがある。このツールで問題の動画ファイルを切り分けてみると、前の番組は2つ以上の音声トラックが含まれていて、どうやら外国語などの副音声がある番組に続いて放送される番組を録画した場合に音飛びが発生しているようだ。
TsSplitterでファイルを分割するには 右図のように「HD画像を残す」「番組情報で分割する」「音声チャンネル切替で分割(SEPA)」のチェックを入れて分割する。
2.対応策
原因は推定できたものの、VLCメディアプレーヤの関連しそうなアチコチの設定項目をいじってみたものの、そのままでは音飛びがなくなることはなかった。
結局 現状の対応策としては以下のどれかになる。
【1】番組予約で前方マージンを0もしくは -1(Sec) 程度とする。(若干番組の頭がきれる可能性あり)
【2】すでに前方マージンを含んで録画されたファイルの場合、上記のように TsSplitterGUIを用いて、音声チャンネル情報で分割して本編(殆どの場合、一番容量の大きいファイル)だけを抜き出す。
【3】VLCメディアプレーヤで再生開始後、一旦オーディをを「無効」にした後、再度元のオーディオトラックを指定し直す。
3.他の再生アプリの挙動
今回、私の動画再生常用アプリである VLCメディアプレーヤで何とか問題を克服しようと「槍玉」に上げたが、他の再生アプリでは同じファイルの再生の挙動がどうなるのか簡単に試してみた。(バージョンや設定、録画ファイルの違いなどにより挙動が以下とは異なることがあり得る)
【1】 KM Player: どのオーディオトラックを選択しても音声が全く再生されない。
【2】 Power DVD 13: 音飛びはしないが、副音声がある場合副音声が再生され、ビデオは最初の番組以外は1セグチャンネルが再生される。
【3】 マイクロソフト映画&テレビアプリ(Windows10 の動画再生標準アプリの Microsoft Music & TV): 音飛びのない録画ファイルなら再生出来るが、音飛びが発生するファイルは「再生できません」となってしまう。
【4】 放送波を受信再生する TV受信ボード PT-3用のTV再生アプリ TVTest.exe をファイル再生モードで使用: 問題なく再生できる。受信して当該の録画ファイルを作成したシステム自身なんだから当然といえば当然か。