岡目八目 その 2

●  今、敢えて規制の強化を  :  技術輸出税を創設してはどうでしょう
国益という概念が無い国、日本
侵略・敗戦という過去の債務から何時までも逃れられず、現に存在する 拉致と言う国家による国際犯罪を正面切って正そうということ自体を躊躇し、 その国から何時ミサイルが飛んでくるかも知れないのに、それに対する 備えの議論は臭い物のようにフタをされたままで、アメリカのミサイル防衛網が 何とかしてくれるんではないかというような、漠とした期待に国全体が 身をゆだねているような気がします。
唯一の救いは、不審船に応戦して追い詰め自爆に追い込んで、全く無防備ではない ということを示した事件でしょうか。しかしそれも、撃沈ではないかという 疑念が船体の引き上げにより、自爆であったということが判明するまでの 慎重な扱いの末の結論でしたが。
自国及び自国民の防衛という、最低限の権利行使にこれほどまでに慎重になる 国は他には無いでしょう。もちろん、過去の過ちは繰り返してはなりませんし、 ややもすると過剰反応をする周辺国との理解・融和政策も大切です。 そうしたことをベースにおきつつ、必要なことには毅然と対処する姿勢を維持し続けてこそ 世界で通用する日本の行動力に繋がると思います。

国益を誘導する政策
国家の安全という観点から、戦略物資に関する輸出・持ち出しの規制があります。 非常に高度な技術を使用した製品や部品を輸出したり情報を持ち出すことは、 渡った相手国の利用の仕方によっては、自国の安全を脅かすことにもなり兼ねず、 規制の対象となっているわけです。これは、国家の安全という最低限の国益を守ることを 考えた場合当然の規制と言えるでしょう。
一方、同様に国の安全という観点から農林族議員を先頭に「食料自給率」を根拠に、 農産物を始めとした食料の輸入制限を唱えています。これも、食料というのは 一朝一夕で生産できるものではなく、諸外国から食料の調達が出来なくなった場合に 備えて若干コスト高でも最低限の食料は自国内で賄おうという考え方で、 長い目で見ることにより短期の効率や経済性を抑えて国益を守ろうというものです。 このように、長い目で見た場合の国益を考えて一部の経済活動に規制を設けたり、 逆に補助を行うことは当然の政策と言えるでしょう。
一方で現実に核兵器開発につながる原子力発電所の稼動を行う国を放置して、 結果として石油の権益も有利な方向に導くために、テロ攻撃からの防衛を唱えて 戦争を仕掛けてしまうような、あからさまな国益誘導を行う国すらあるのが現実です。

国内から技術を持ち出すのがフリー ?
私が奇異に感じているのは、こうした規制や政策があるのに製造の海外シフトが 何の規制も受けず、各企業の自由裁量に任されていることです。 長年にわたって蓄積してきた技術やノウハウを海外の工場に移転し、海外の 低コスト労働力を利用してコスト競争力を追求することはメーカにとって 今や当然の流れです。 しかし、こうしたメーカの技術やノウハウは単に一企業のみの努力によって 蓄積されて来たわけではありません。 場合によっては国や地方自治体の補助金を使ったり、下請けなどの関連企業の 協力による割合が多いと思います。 それにもかかわらず、一企業が「生き残り」の大義名分でこれらの技術を 海外に移転し、2-3年で現地に根付かせてしまうのです。
その企業が海外企業との国際競争力に勝つためにこうした判断をしたのなら 仕方ないとも言えますが、多くの場合国内企業同士の競争で我先に競って 製造を海外移転していく様は、産業政策の無策としか思えません。 結果として、更に数年先には日本企業全体の国際競争力が失われていくのです。 この国には自国の富の源泉を知らない政治家しかいないのではないかとさえ 思えてきます。

今、技術輸出税の創設を
現内閣は、声高らかに「規制緩和」「構造改革」を唱えてスタートを切り、 既存勢力の反対を強引に押し切って、各種の既存の規制や権益を取り除いています。 これはこれで、なかなか評価に値すると思います。
しかし、全ての場面でこの規制緩和が良いとは言えないのではないでしょうか。 現に、一時代前に規制が横行していた頃、製造業の世界では極めて自由な 競争が存在し、それによって世界一の製造力が培われたのです。 今、その他業界の規制が緩和されるとき、製造業に新たな規制が行われても 不思議ではありません。 各企業の勝手な海外シフトで、大切な製造技術・ノウハウが流出していくのを 堰き止めることが出来るのは、政治の力しかないと思います。 国益に反する技術の持ち出しを規制するために、「技術輸出税」のような 課金を行い、国内の技術を持ち出して海外で生産した場合に、生産高に一定率の 税金を課すのです。
当然国内の企業は、国内資本のみではありませんからこうした政策を実行する ためには、もっと複雑なシステムを考えざるを得ないと思いますが、 こうした大きな方向性を示して、知恵を出し合うことがまず必要ではないでしょうか。 そして何より、こうした問題提起により一企業の生き残りと、国全体の利益の 両方を経営者が考えるようになることこそ、大切なことだと思います。

以下、この続きの予定です。

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