スマホ/タブレットの画面を TVに表示する方法

EzCast編はこちら


初回アップ:2018/01/27

概要
スマホで撮影した動画や写真、あるいは Web検索した情報をスマホ画面だけでなく、大画面の TVで表示させて家族皆で楽しみたい、と言うことは時々あると思う。撮影したファイルを Google/Microsoft のクラウドサービス経由で PCに表示させる方法は比較的知られているが、ネットに非接続の TVに直接表示させるには、専用のケーブル(MHL変換アダプタ)を利用すると言う方法もあるが、その度に USB~HDMIコネクタを抜き差しするのは面倒だし、TVに近づいて操作しなければならず鬱陶しい。
しかし数年前から普及し始めた簡単な専用アダプタを利用すると、そのアダプタを TVの HDMI端子に接続しておくだけで、スマホ/タブレットが標準搭載している WiFiによる画面のミラーリング機能などによってスマホ/タブレットの画面上のアイコンをタップするだけで TVに表示させることが出来て便利だ。
この専用アダプタには Googleが販売する Chromecast/多くの中国メーカーが販売する Anycast等と言う商品名の Miracast準拠のアダプタ/その双方の機能を合わせたような EZcastと呼ばれるアダプタ/更に Appleが提唱する Apple TV などがあるが、今回そうした専用アダプタのうち一番基本的な 「Miracast」という機能を搭載した Anycast(商品名)と言うアダプタを購入して試してみたので、実際の使用方法などをレポートする。

ただし毎回のことながら、それらのオリジナル動画には著作権や被写体の肖像権などが絡む場合があるので個人の適切な判断と責任で行うこと。このページの説明は単に私の実験結果に基づくものであって、記述の適否によらず結果について私は一切関知しない。


Contents:
0. TV表示用アダプタの種類
1. Anycast を購入してみた
2. 設定
3. Anycastの問題点


  1. TV表示用アダプタの種類
  2. 繋ぎ方
    環境・利用機器
    手段
    (アダプタ)
    代表製品 備考
    線でつなぐ
    送信側が「DisplayPort Alternate Mode」対応/受信側(TV)がMHL対応機器
    MHL 変換コード

    MHLケーブル 1.5m VIS-C15MH-K


    送信側が「DisplayPort Alternate Mode」対応/受信側(TV)がMHL非対応機器
    MHL 変換アダプタ

    MHLアダプタ [USA-M02BK]


    別途 USB充電ケーブル、USB充電アダプタ(TVのUSB端子)、HDMIケーブルが必要
    WiFiでつなぐ WiFi アクセスポイント有
    Android/Windows/iOS
    Chromecast Chrome
    Cast
    基本的に Chromecastアプリ内で操作する。
    全てのデータ・コマンドはWiFiアクセスポイント経由で送信され Chromecastが再生し HDMI経由で TV表示させる。GoogleCastをインストールすれば画面全体のミラーリングも可(未対応のスマホも多い)。
    アプリは Google Play ムービー、YouTube、dビデオ、GoogleChrome など。
    スマホ/タブレットが Miracas*非対応の機種でも、Win/Macからも同一WiFiアクセスポイントに接続している端末からは、アプリ画面の送信が出来る。
    表示開始後は スマホの画面/電源 OFFしても表示は継続する。
    電池消費は比較的少ない
    タイムラグが少しある
    WiFi アクセスポイント有
    Android/iOS/Windows
    EZcast EZCast
    EZcast Pro
    基本的に EZcastアプリ内で操作する。
    Miracast/AirPlay/DLNAモードが使え画面のミラーリングも可能。
    WiFi アクセスポイント有
    iPhone/iPad
    AppleTV Airplay iPhone側で再生した画面を WiFi経由で送信しアダプタ側で表示する
    WiFi アクセスポイント無
    Android/iOS/Windows
    (WiFiDirect)
    Miracast
    AnyCast
    Mirascreen
    などの商品名で販売されている

    TVによっては機能を内蔵したものもある
    WiFiアクセスポイントがなくても WiFi Direct機能を使ってスマホWiFi ~ Miracast WiFi 間で直接スマホの画面データを Miracastアダプタに送信して HDMI端子経由で TVに出力する。
    画面ミラーリングだけなら特別なアプリは必要としないがスマホが Miracastをサポートしている必要がある。
    動画など画面の表示中はスマホ画面も消せずスマホの電池消費が大きい。
    ほとんどのアダプタが Miracast/AirPlay/DLNA対応をしている。
    TVに HDMI端子無し Miracast(EZCast)+HDMI>AV変換器

    上記のアダプタで一旦 HDMIに出力した後、AV変換器でビデオ/オーディオ出力する

    * EZCast は Actions Microelectronics 社がCPUチップとファームウェア、基本的な基板設計を供給し、中国の各社がそれをトレースして製造販売しているため類似製品が多く値段も千円台から 1万円以上までと幅広いが、ネットの口コミでは品質的に怪しいものが多い。

    * Miracast(機種によってはスクリーンキャストと呼ぶ)は WiFi Allianceが策定した WiFi技術の規格で、ビデオ・音声を有線伝送する HDMI規格を WiFi化したものと見ることが出来るが、映像はH.264に、音声はLPCM/AAC/AC3に一度圧縮されて伝送されアダプタ側で伸長されるため、伝送によって不可逆な画質劣化と若干のタイムラグが生じる(気になるかどうかは個人差あり)。
    スマホが Miracast(スクリーンキャスト)対応なら、スマホ側は別途のアプリをインストール・実行する必要がなく、「設定」で「スクリーンキャスト」を「ON」にすることで画面送信が可能となる。(実行するアプリの制限なくすべてのアプリの画面が送信可能)

  3. Anycast を買ってみた
  4. 上の表のように、スマホの画面をリアルタイムで TV画面に表示させるシステムは色々あるが、ネットの利用者の書き込みを見ると結構「使えない」と言う情報がある。WiFiアクセスポイントへの接続設定そのものが一般人には難解だから使い方が分からず「不良」と決めつけている場合も多々ありそうだが、使用開始数時間~数週間で働かなくなったとか、長時間使用していたら使えなくなったという報告も多い。技術屋的に推測するに、これらの受信アダプタは Full Highvision の動画が h.264で圧縮されて転送されたものを受信して伸長・復号化して TVの HDMI端子に出力するもので、10年前のデスクトップ PCにとってすら結構重い処理なはずで、この小さな筐体の中でそんな処理をしたら熱的にもかなりなダメージがあるのでは? と思われる。その証拠に USB端子で供給される電源は 5V 1A(=5W)以上必要で、使用レポートでアダプタ本体がかなり熱くなるという記述もある。

    そこで、まずは 画面のキャストという基本機能さえ実現できればいいと言うことでなるべく機能が単純な Anycastと言うアダプタを買うことにした。それでも Amazonで検索すると 10種類以上のアダプタがヒットする。但し写真で見る限り多くのアダプタは殆ど同じ形状をしており、供給元が異なっても中のシステムはほぼ同じと思われる。

    それよりも私の家の TVはかなり古い時代の SONY Bravia(KDL-32J3000)で、HDMI端子は 2個実装されているものの そのコネクタ間隔はかなり狭く、HDMIプラグが直に本体に実装されている小型のアダプタではもう一つの HDMIコネクタと干渉しそうだ。だから Chromecast2 のような本体からケーブルが出た先に HDMIプラグの付いたアダプタの方が良さそうにも思える。

    そんな事を考えながら 物色していると、Amazon のページで比較的評価の高い(★4つ) Anycastアダプタが見つかった。価格は 2,699円とこの手の商品の中では高めだが、説明文が日本語も完全ではないものの比較的しっかりしているし、発送元が国内の Amazonで 「お急ぎ便」でなくても翌々日には届きそう。ということで、SEIJIK というブランドのアダプタに決めて発注。同時に HDMI端子が DVDレコーダーのコネクタと干渉して挿せない場合の事を考えて 15Cmの HDMI延長コードも購入(こちらは郵送料含め 250円ほど)。実際に夜中に発注したが両方共 翌々日午前中には届いた。

    Webでの説明では、Android からは Miracastだけ、 iOSからは AirPlayだけの 画面キャスト単機能のアダプタだ。

    ミラーキャストの単機能のアダプタを選んだのには若干のわけがある。それは Webの評価を見ていると EZcastの場合、短期間に使えなくなるという情報が多いこと。どうやら電源は USBから供給するが電流が 1A以上必要な様子で、結構な発熱をしそうだという情報がある。Chromecastも EZcastもブラウザを実行するため小さな筐体だがそこそこの CPUを実装し Linuxベースのファームウェアが走っているらしい。とすればこんな小さな筐体は所詮無理ではないかと思われる。その為かどうか知らないがほぼ同じシステムと思われる Chromecastは初代機は同じ形状だったのに 2号機では丸いかなり大きい筐体に変更されている。


  5. Anycast の設定
  6. 箱には日本語の小さな取説も入っているが、Androidでの設定手順そのものは単純だ。以下 Anycastを「アダプタ側」スマホ/タブレットを「Android側」と呼ぶ。

    ① TVの HDMI端子にアダプタを挿入し、

    ② 付属の USBケーブル兼 WiFiアンテナコードでアダプタに電源を供給し、

    ③ TVの入力切替で該当の HDMIを選択する。

    図-2(iOS画面)

    ④ 10秒ほどすると左のように TV画面に Anycastの設定画面が表示される。 設定画面は iOSと Android で異なり、アダプタ本体の小さなボタンを押すことで交互に切り替わる。右の図は iPhoneなど iOS端末接続用の画面(Android端末の画面はこの下)。

    図-3(Android画面)

    ⑤ Android用画面では TVの画面下側に「Waiting for connection」と表示されたら Androidの場合は端末側で 画面のミラーリング機能をONにする。
    詳しい操作方法は機種によって異なるのでそれぞれの説明書や Helpを参照する必要があるが、以下は Xperia Z2タブレットの例。

    図-4
    ホーム画面の歯車のアイコン「設定」をタップすると右図のような設定画面が表示されるので、「(端末機種名)接続設定」をタップ。
    図-5
    スクリーンミラーリング」をタップ。
    図-6
    送信」側の「開始」をタップ。
    図-7
    検索開始」をタップすると付近の Miracast端末を検索する。
    図-8

    図-9
    検索」窓の「機器を検索中」のところに「Anycast-XXXXXX」が表示されたらそこをタップ。
    図-10
    すると Android側の WiFi信号をアダプタが受信して 図-3の TVの画面表示が「Connection in Progress」となる。
    図-11
    そのまま 10秒ほど待って接続が成功すれば、 TV画面は「Dispatching IP Address」>「Ready for Display」と切り替わって 10秒ほどでスマホ側のモニター画面が表示される。
    この状態でスマホ側で写真/ビデオ/Youtube などを再生すれば その画面がそのまま TVに表示される。

    ⑥ ミラーリングを終了するには、スマホ側で画面のミラーリング機能を OFFにする。

    以上がスマホの画面を TV画面にミラーリングする方法。

    尚、画面データは WiFi帯域で転送されるため h.264で一旦圧縮されてから送信され、アダプタ側で伸長されて HDMIに送られるので若干のタイムラグが生じ、圧縮処理もかなり重いのでスマホ単体でストレスなく表示できる動画でも画面が一旦停止したり、乱れたりすることが多い。

  7. Anycastの問題
  8. ① 応答遅れ
    実際に画面をミラーリングした時の映像が右図。画面の左半分はタブレットの画面。右側が TV画面。タブレットの画面をスクロールした時 TV画面の方が一瞬( コンマ何秒?)遅れてスクロールされているのが分かる。
    動画を視聴したりするのは全く問題にならないが、このディレイはゲームをする時や PCの外部モニターとして使用する場合は問題になりそうだ。


    ② 電源品質
    AnyCastは電源の性能(電流容量はもちろん、過渡応答やノイズなどが影響している?)によって接続確率や転送速度が変わる。しかもかなり要求は高そう。
    少なくとも私が入手した Anycast M2 Plusの個体はかなり気難しい。家にある電流容量 1A以上の 5個の スマホ・タブレット充電用 ACアダプタを試したが一番成績の良い Huaweiのスマホに付いてきた充電アダプタ(電流容量 1.2A)でも 3回~5回タブレット側で接続操作を行ってやっと接続できると言う状況。勿論 Anycast~タブレットの距離は 50Cm以下とかなり近づけた状態でテストしている。電流容量が 1.5Aの Xperiaに付いてきた ACアダプタは 10回の操作でやっと 1回つながるかどうかと言う感じで単に電流容量だけでは判断できそうにない。
    しかし、PCの USB端子から電源を取るとほとんど問題なく一発で繋がる。

    上記の電源問題を確認するために ACアダプタの出力に電解コンデンサ(合計2000μF)を付けて特製の電源を作って見た。この電源を使うと同じ ACアダプタでもかなり接続できる確率はアップする。しかしまだ PCの USB端子には及ばない。
    考えてみれば、電流容量 1Aを消費しつつ h.264 でリアルタイムで動画をエンコードする回路とはかなりの負荷になるはずで、しかもそれに WiFiの送受信回路までぶら下がっているわけで、専用とは言いつつあまり太くない アンテナ/USBコードを介してその電源が供給される場合、それらのインピーダンスを考えると回路にとってはかなり厳しい条件になりそう。それにしては本体は小さく、電源の平滑用コンデンサはあまり大きなものが入っていないのでは? と思われる。

    そこで AnyCast本体のケースをそっと開けてみた。やはり電源のコンデンサらしきものはあまり大きくない。表示では 「2R2」とあるから 2.2μFのものが 3個だけ確認できた。実験でここに並列に十倍程度のコンデンサを追加してみたかったが、なにせ表面実装で老眼には作業がきつすぎるので諦めてケースはもとに戻した。


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