道具の感想:ユーザとして

初稿: 2003/ 3/ 9


●  最近の道具 最近(2003年頃ですが)手に入れた道具の中で感じたことを一つ。
腕時計がクォーツになったのは、もう30年近くも前になります。この腕時計用クォーツの開発苦労話も NHKの プロジェクト-X に諏訪湖畔の時計メーカーの話として紹介されておりました。私が初めてクォーツ時計を使った時は、もう時間の狂いを心配する必要は無いんだとか、ぜんまいを巻かずにおいたり引出しに何日もしまいっ放しにしても止まってしまうことが無いんだと、それまで日差 ○十秒の自動巻き腕時計しか使ったことが無かった私からすると、非常に便利な道具に思えました。
しかし、最近手に入れた光発電式電波時計はこのとき以上に感激でした。前述のようにクォーツになったことで、すでに腕時計の分針の精度を心配することはなくなっておりましたが、20-30秒の狂いは気にしたことがない分、秒の精度までは当てにしたこともありませんでした。しかし、月差15秒以下のクォーツでしかも毎日少なくとも一回標準時の電波に対して校正されるこの電波時計では、検知出来る秒針の狂いも無いのです。この時計を持って始めて、日本の電車の発車時間の正確なことに感心しました。事故でもない限り発車の際のドア締めの正確さは実に大したものです。
CLOCK.JPG

とここまではあたりまえの感想なんですが、何日か使っているうちに、全く違う感想を持ち始めました。光発電していると言うことで、夜中に全く光が当たらなくなって一定時間が経つと、秒針を含めて全ての運針が止まるのです。そして、翌朝部屋の電気をつけると、慌てて秒針がかなりのスピードで運針を始めて何回転もした挙句、正確な時間表示にあわせるのです。まるでサボって居眠りしていた召使が、主人に見つかって弾けたように慌てて動き始めたような感じです。この姿を見ていると、何かとても忠実で正確な割に、しかしちょっと居眠りをしてしまう程度に抜けている所もある人間的な召使を雇ったようなそんな愉快な気持ちになってきます。
そして、光がないと動けないと言うことを思い出して、ついジャケットの袖をたくし上げたり、デスクワークの最中は腕から外して、文字盤を光に向けて置いたりします。忠実な割に手数のかかるペットか、あるいは希少な観葉植物を育てているようなそんな気持ちにさせてくれるのです。と同時に、「でも、誰かの時計と2-3個を並べたときに、どれも秒針まで全く寸分の狂いも無く同じ運針をしていたら、それはそれでちょっと気味悪いかもしれないな。」とちょっとアナログ人間の余分な心配も頭をもたげたりして、久しぶりにいろいろ考えさせられる道具との出会いでした。




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