【U】 頭脳労働へのヒント



ドキュメント履歴: 2003-08-xx 初回アップ

U−2.道具は使うもの・・・ではなく・・・

 すでにある道具を使って仕事をすることは技術者でなくても出来る。
現代人なら例え技術者でなくても、生きていくためには何がしかの新しい道具を使わざるを得ない。その意味で人の作った道具を使って人並みの仕事をすることは、技術者にとって極めて低レベルの作業だ。例えば部品加工について考えると分かりやすい。他社と同じ加工機で同じ測定機を使ってモノ作りをしても、他社と同じレベルの製品しか出来ない。買ってきたままの道具は如何に高価で先進的でもすぐ他社に追いつかれる。また測定精度を超えた加工精度の加工をしようとしても、出来たモノが設計通りの良品か不良品かが測定できなければ本当に加工した事にはならない。逆に例え他社と同じ測定装置であったとしても、トライアンドエラーで工夫をして他社に勝る精度で加工の結果を測定できるようになって、設計からより高精度の部品加工の要求が出れば自ずと加工機にも精度向上の工夫が出来る。このように測定結果さえ信頼性が保証されれば、加工は必ずしも理論的でなくカットアンドトライでもある程度は向上する。しかし測定結果には信頼性を保証する理論的裏付けが常に要求されることから、しっかりとした理論検証から入らなくてはいけ?い。従ってメーカーの技術進歩に当たっては、まず他社に勝る測定を可能にすることからスタートすべきであると言うのが私の持論である。
 また別の見方をすれば測定技術は加工技術に較べて比較的工夫をしやすい。現代は精度・生産性の面から加工機械が大型化・自動化し、かってのように同じ加工機でも熟練者が使いこなすことにより高い精度が得られると言うことはなくなった。これに較べ測定技術の分野は、用途が多岐に渡りその用途毎に様々な仕様が要求されるため完全にレディメードの測定機というものは存在しないといっても過言ではない。その仕事の形態によって要求される測定機の仕様が夫々に異なるとなれば、1技術者の力の及ぶ範囲で何倍かの精度アップ又は効率アップにアイデアを生かせる可能性が大きい分野でもある。
 こうした考えから私は常々実験用の回路などの道具を出来る限り自作して使うことを心がけ、人にも勧めている。今まで自分自身でも、大は測定システムと呼べるような大掛かりなハード・ソフト込みのシステムから、小は簡単な測定用アンプまで、実験用の様々な道具を作ってきた。しかし考えてみれば、年少の時代におもちゃを自作して遊んだ経験の無い今の若い世代の技術者にこそ、何を作るかを考えさせることから始め、モノを作る経験をさせ、仲々考え通りに出来ないことを経験し、しかし最後には自分が考えた通りに動いた感動を味わってみる経験はとても大切であると考えている。それが今まで誰も考えなかったようなモノであれば感慨はなおさらであって、一度この感激を味わってしまった人はこの感激の虜になるだろう。そして他人にその価値を認められたらそれこそ最高の自己実現になる。

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